メタボリックシンドローム外来

人間ドック医が語るメタボリックシンドロームの実体

脂肪肝をあなどるなかれ!

今まで脂肪肝は可逆性疾患で、肝臓内の脂肪が減少すれば治る病気だと考えられていました。確かに大部分の脂肪肝ではこのことが当てはまります。

しかし以前より腹部超音波検査で、脂肪肝の症例をみていますと、脂肪肝の程度にはピンからキリまであります。重症の脂肪肝では本当にこの症例は大丈夫なのかと思うこともありました。

最近このような状態の脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれるようになりました。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、アルコール摂取歴がないにもかかわらず脂肪肝から肝炎、肝硬変に至る疾患であり、肥満やインスリン抵抗性、脂質代謝異常を背景に発症することが多いことがわかってきました。

さらにNASHから肝硬変を経て肝癌を発症した症例も報告されているいます。
NASH

NASH症例は、50〜60歳の女性に多いと考えられています。閉経期の女性は女性ホルモンの減少により、この時期に内臓脂肪が蓄積し脂肪肝になる人が多いためです。

では男性はどうかといいますと、男性の場合アルコール摂取があり、同様な症例でもアルコール性脂肪性肝炎と分類されてしまうため、NASH自体は女性に比べて少なくなります。

脂肪肝もあなどれない疾患となってきました。脂肪肝で肝臓癌ができるとは、数年前までは考えもつかない病態です。

非アルコール性脂肪性肝炎も睡眠時無呼吸症候群もメタボリックシンドロームも21世紀になって急増してきている疾患です

いかに現代の運動不足と過剰栄養がもたらす病態が深刻な問題かわかってもらえればと思います。

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ウエスト周囲径は蜃気楼

メタボリックシンドロームの日本診断基準では、内臓脂肪蓄積の指標としてウエスト周囲径が、必須となっています。男性85cm、女性90cm以上を診断基準としています。

現在もウエスト周囲径の数値には異論も多いところです、その理由としてウエスト周囲径自体が皮下脂肪も含み内臓脂肪蓄積を正確に反映していないためです。例えばお相撲さんはほとんど85cm以上のウエスト周囲径ですが、内臓脂肪蓄積ではなく皮下脂肪の増加です。

さらにウエスト周囲径が基準を超えれば腹部CT検査で確定診断を行うとガイドラインではなっています。しかし腹部CT検査も平面的な臍高部の内臓脂肪断面積を示しているだけで、本当の内臓脂肪体積を見ている訳ではありません。

次ぎに体脂肪量測定に使われる生体電気インピーダンス法による内臓脂肪量計測が考えられていますが、これも内臓脂肪量の増加は分かりますが、相対的なものだと考えられます。

メタボリックシンドロームは、本当は内臓脂肪蓄積による脂肪細胞自体の機能低下が分からなければ診断できないのです。そのためには脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの測定が重要です。そのなかでも脂肪細胞機能低下により分泌量が減少するアディポネクチンの測定が将来的には有望です。

ウエスト周囲径の測定は、メタボリックシンドロームのスクリーニングとしては、簡便で使いやすい指標です。しかしウエスト周囲径が絶対ではありません。

今の日本ではウエスト周囲径が男性85cm、女性90cmあれば、メタボリックシンドロームと決めつけすぎている傾向があります。逆に男性85cm未満ならOKかというと結構な確率でメタボリックシンドロームの人がいらっしゃいます。さすがに80cm未満ではほとんど認めませんが。

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